恋桜 -プロローグ-
「きれいだね、桜」 春になると、あなたは決まってそう言うの。 「俺、花の中では桜が一番好きだな」 そう愛おしそうに空を見上げるあなたを見るたび、わたしはいつも切なくなるの。 あなたの唇から紡がれたその言葉が、このわたしに向けられたものならいいのにと、叶いもしないきもちが渇いた喉の奥でうなるから。 ……けど、わたしはこの季節が一番好き。 舞い散る桜たちがあなたとわたしを会わせてくれた大切な季節だから。 今にも愛おしくてはりさけそうなこの想いも 桜が運んでくれたらいいのに――……